日本IR協会について

第8回 IRの社会的責任

日本大学経済学部 専任講師 佐々木 一彰 氏(地域政策学博士)

日本でカジノを駆動部分としたIR構想が議論され続けて10余年が経過している。議論が始められた当初はある意味で雲をつかむような話であったが急速にここ数年、実現性を帯びて来つつある。それに伴い、日本でIRが実現した場合、どこが運営を担うのかという話題が出てきている。日本でIRの議論が始まった当初は「カジノ」という言葉は日本人にとって極めて反社会的な意味を持ってとらえられていたが、近年ではその意味合いは徐々に薄れつつあるようである。海外のカジノが合法化されている国々では多くのカジノオペレーターが市場に上場している事実をもってしてもそれは当然のことである。社会的責任を果たさなければならない企業として存在しているという点においてはカジノオペレーターは何ら他の企業と変わらないからである。

そのような認識が広がるにつれ日本企業の中にも積極的にIRの運営に関与しようとする企業が増えてきていることは大変喜ばしい事である。日本企業の中にはそれなりに海外でカジノに関するノウハウを蓄積している企業も存在しており、海外でのノウハウの蓄積は無くともIRの運営に欠かせない有形、無形の資産を有している企業も多数存在しているからである。ただし、ここで注意しなければならないことは社会的コストとベネフィットの観点より内資、外資を問わず、IRが設置される地域の住民、地域に対して最も社会的責任を果たす企業が運営に携わるべきであるということである。それがひいては最終的には日本の国益につながることになるからである。

<佐々木 一彰 氏 プロフィール>

日本大学経済学部専任講師(地域政策学博士)
IR*ゲーミング学会理事
ネヴァダ州立大学EDP(カジノ上級管理者養成プログラム)終了
余暇ツーリズム学会理事
日本ホスピタリティ・マネジメント学会監事

文部科学省科学研究費補助金「観光資源としてのカジノ」研究代表
単書『ゲーミング産業の成長と社会的正当性』税務経理協会,2011年.
共著『カジノミクス』小学館新書,2014年.
翻訳書『ゲーミング企業のマネジメント』税務経理協会,2005年.

論文
余暇ツーリズム学会誌第二号「IRにおける非カジノ部門の重要性-飲食業教育を中心として-」2015年.他多数。

報告
Kazuaki Sasaki(2013) “Integrated Resort and Casino Law in an Asset-inflated Japanese Economy” The 15th International Conference on Gambling&Risk Taking(University of Nevada Reno Las Vegas)
Kazuaki Sasaki(2012) “The Pacific Rim: Is Gaming Ready to Explode? ”Global Markets Forum ,Global Gaming Expo in Las Vegas,
Kazuaki Sasaki(2009)“Gaming Regulation in Japan”,14th International Conference on Gambling and Risk Taking 26th May(University of Nevada Reno)他多数。