日本IR協会について

第3回 IRは地域、日本の魅力の発信基地。地元産業界のイニシアティブが肝要

キャピタル&イノベーション代表取締役 小池 隆由氏
― 2014年11月掲載 ―

カジノを含む統合リゾート(IR。Integrated-Resorts)の誘致、事業化において、地元産業界、地元企業の中心的な関与は可能であり、また不可欠と考えられる。地元産業界、地元企業に期待される関与とは、IR運営会社の所有(株式のマジョリティ保有)に他ならない。地元産業界、地元企業がIR運営会社(コンソーシアム)のコアとなる企画会社を立ち上げ、協力的な外部企業(国内、国外のカジノ事業者を含めて)を選定し、事後的に加えていくわけだ。地元産業界、地元企業は不足する力を、外部企業をコンソーシアムに招き入れることで獲得できる。また、IR運営会社は運営実務において、外国の経験豊かなマネジメント、スタッフ、コンサルタントの力を十分に活用できる(所有者がマネジメントを任命)。地元産業界、地元企業の最大の武器は地域社会において長年の間に積み上げた信頼性(CSR=CORPORATE SOCIAL RESPONSIBILITY)である。

政府がIRを実現する重要な目的は、地域、日本の魅力を世界に発信する拠点の整備である。それは、クールジャパン、ビジットジャパン戦略の推進である。クールジャパンとは日本の魅力(文化、産業)を世界に発信することにより、広範な産業の国際競争力を再強化する戦略。ビジットジャパンとは訪日外国人観光客を拡大する戦略。実際、国際観光産業振興議員連盟(IR議連)は細田会長を筆頭に、IRがクールジャパン、ビジットジャパンに貢献することの重要性を繰り返し説明している。また、10月16日に開催されたIR議連総会では「IR推進法案」の修正、「IR実施法制定へ向けての基本的な考え方」の改訂が発表されたが、基本的な考え方には「クールジャパンの推進に資することを目的とする」と明記された。

一方、IRの制度設計は、IR事業化における地元産業界、地元企業のイニシアティブを強力にサポートする方向(詳細はIR実施法にて規定)。

IRの制度設計の第一のポイントは、自治体が国に対してIR誘致を提案、(国から選定された場合に)事業者を任命する仕組み。自治体は地域社会(政界、財界、住民)の支持なしに、国から選定されることはない。また、自治体は事業者の任命において、地域社会の声を重視することになる。この制度設計は、地元産業界、地元企業の十分な関与を求め、サポートする。地元産業界、地元企業がイニシアティブをとるIR運営会社(コンソーシアム)の優位性は明らか。IRの実現目的は地域、日本の魅力の発信基地の整備であり、日本企業、地元企業がイニシアティブをとるのは当然のことである。

日本のIRは10ヵ所すべてが世界的にも上位にランクされる見通し。一方、日本に参入を熱望する外資カジノ事業者は20社以上、国内にもIR、カジノ運営の能力を持つ事業者は複数存在する。地元産業界、地元企業が中心となるIR運営会社(コンソーシアム)は売り手市場であり、強気に外部事業者(カジノ事業者を含む)を選定し、交渉できる。

日本のIR事業化は世界の先例と比較し、圧倒的な好条件を備えている。高収益、資金調達力(高収益と低金利の結果)に加え、カジノ経験ノウハウ調達の環境整備、観光&文化コンテンツのポテンシャル、日本の産業力、など。とくに、カジノ経験ノウハウはこの10年の間に、世界的に急速にコモディティ化(標準化、流動化)しており、IR運営会社はそれらを海外から容易に調達できる。

日本のIRは制度上、自治体が主導し、地元産業界、地元企業の活躍機会が大きいビジネスである。自治体、地元産業界とも自らが広域ブロック、日本を代表しており、世界から注目されていることを認識し、自信を持って行動して欲しい。

IR、カジノについて詳細な経済分析は、筆者の東洋経済オンライン連載「IRで始まるツーリズム革命。カジノが日本にやってくる!」
(全10回、第一回はhttp://toyokeizai.net/articles/-/41492)を参照。

<小池 隆由プロフィール>

1991年山一證券入社。山之内製薬などを経て、2005年にドイツ証券、2010年にゴールドマン・サックス証券に入社。証券アナリストとして、メディア、エンターテインメント、インターネット産業を担当。2012年に、ウォール・ストリート・ジャーナルが選ぶアナリストランキングにてメディア部門でアジア第1位。2013年9月、キャピタル&イノベーション株式会社を設立。カジノを含む統合リゾート(IR)整備に向け経済界への啓発に注力する。
e-mail:koike@capital-innovation.biz